建築を仕事としている私が大好きな建築を紹介するシリーズの第5回です。今回は、隈研吾さんの「角川武蔵野ミュージアム」を紹介します。隈さんの建築と言えば、新国立競技場もそうですが、外観が軽快でシャープな印象があります。しかし、このミュージアムは外装材に花崗岩の仕上材を使用し、重厚で象徴性を重視した建築になっています。(第4回の記事はコチラ)
今回は、もう1つのオススメ建築である馬頭町広重美術館とともに紹介してみます。
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この記事の目次
- 第5回 大好きな建築 隈研吾「角川武蔵野ミュージアム」
- 私が感じたこの建築の特徴
- 私がオススメする隈さんの作品
- 最後に
1.第5回 大好きな建築 隈研吾「角川武蔵野ミュージアム」
建築物の概要とアクセス方法は、下記です。
建築物概要
角川武蔵野ミュージアム
設計 隈研吾
竣工 2020年4月
建設地 埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
構造 RC造+S造 地上5階建て
延床面積 約12,000㎡
用途 文化複合施設(図書館・美術館・博物館)
アクセス
電車:JR武蔵野線「東所沢駅」から徒歩約10分
自動車:関越自動車道「所沢IC」から約8分
2.私が感じたこの建築の特徴
隈さんの作品は、商業施設やオフィス、美術館などさまざま用途の建築がありますが、外観はどれも軽快でシャープな印象です。ただ、この角川武蔵野ミュージアムは石の仕上げを使用した重厚な外観。圧倒的な存在感で建っています。外観は球に近い多面体になっていて、季節や訪れる時間帯によって、建物の見え方も常に違うものになるでしょう。周辺環境との調和よりも象徴性を重視しているように感じます。
近づいてみると、なんと外装材に使っている花崗岩の仕上げ材の間には目地処理がされていない! ということは、この仕上げの内側に風雨を防ぐための層がもう一層あるということ。余計なお世話ですが、さすがにコストがかかっていますね(笑)。外観に関しては、大きな彫刻を見ているような、アートとしての側面も大きいな作品です。
残念ながら、今回はチケットを予約しておらず内部空間はエントランスホールしか見学できませんでした。外観だけを見るととても小さく、この建物が5階建てなんて想像はできません。この小さな空間を5階建てとして、どのように有効利用しているのかとても興味がありますが、話題の図書スペースを含めて、また次回の楽しみにとっておきます。
3.私がオススメする隈研吾さんの作品
隈さんの作品は、スターバックス太宰府店、歌舞伎座、ティファニー銀座店、淡路サービスエリア、馬頭町広重美術館、新風館、築地KYビルなどを実際に見てきました。今回はそのなかから、オススメとして馬頭町広重美術館を紹介します。
建築物概要
馬頭町広重美術館
設計 隈研吾
竣工 2000年3月
建設地 栃木県那須郡馬頭町馬頭116-9
構造 RC造+S造 地上1階 地下1階建て
延床面積 約1,962㎡
用途 美術館
アクセス
電車:JR宇都宮線「氏家駅」下車、路線バスで約60分「室町」下車。
自動車:常磐自動車道「那珂IC」から約50分
この建築の特徴
この作品は“木ルーバー”の一言につきますね。新国立競技場でも使われているあの木ルーバーです。私はこの建築で初めて化粧材として使う木ルーバーをみました。間口の広い平屋建てに出の長い木ルーバーの軒。
これなに?が第一印象です(笑)。
象徴的な建築という点で角川武蔵野ミュージアムと共通している作品です。ですが、この広重美術館に関しては、周辺環境との調和をしっかりと取ったうえで象徴性を出しています。内部空間にもこの木ルーバーを使用し、外壁をガラス張りにすることで、外部と内部につながりを持たせているように感じます。
隈さんの作品、この広重美術館も角川武蔵野ミュージアム、新国立競技場にしても、これからこの木や石の仕上材がどのような質感に変化していくのか、私としては、10年後、20年後にとても興味が湧いてくる建築です。
4.最後に
私が学生の頃なのでもう20数年前になりますが、隈さんが私の大学で講演会をされました。失礼な話ですが、その講演会で初めて隈さんを知りました。おそらく、“建築家”に触れた初めての経験だったと思います。
それからは雑誌や本で作品を見たり、実際に建物を見学に行ったりしており、一昨年には、京都の某ホテル改修工事で下請け業者として、仕事に携わる機会もありました。そういう意味で隈さんには少し思い入れもあったりします。
今回紹介した角川武蔵野ミュージアムや新国立競技場と、まだまだ精力的に新しい作品を作り続ける隈さんに刺激をもらいつつ、私も毎日の業務に励んでいきます。
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