たまたまですが、前回紹介した「鉄の骨」の記事に続いて、今回も建築に関連した作品の記事になりました。今回紹介するのは、横山秀夫さん原作のサスペンスドラマ「ノースライト」。
みなさんも普段の生活でいろいろな葛藤がありますよね。「ノースライト」は、登場人物それぞれの立場や状況に応じた「葛藤」がリアルに表現された作品です。
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この記事の目次
- 人それぞれの【葛藤】を表現したドラマ【ノースライト】
- 作品内容の紹介
- 心に響いた言葉 ベスト3
- 最後に
1.人それぞれの【葛藤】を表現したドラマ【ノースライト】
私も建築士なので、まずはタイトルにも関係している採光の説明をしておきます。家は北側に水回りを、日当たりの良い南側に部屋を配置するのが一般的です。この作品のタイトルである「ノースライト」は、北側からの採光を意味していて、南側の直射日光よりも柔らかい、優しい採光になります。ただし、北側の採光は太陽高度、日照時間等の関係で部屋全体に取り込むのが難しい採光になります。
ドラマ「ノースライト」は、登場人物それぞれの「葛藤」を表現した作品です。仕事、同僚、家族、生い立ちなど、人ひとりでも置かれる状況や立場が変れば、その「葛藤」の種類や質も変わってきます。各登場人物の置かれている状況とその時の葛藤に注目しながら、観るとより作品に入っていけるように思います。
2.作品内容の紹介
2.1 原作
タイトル ノースライト
著者 横山秀夫
発行日 2019年2月22日
出版社 新潮社
2.2 主な出演者
青瀬稔:西島秀俊
吉野陶太:伊藤淳史
岡嶋昭彦:北村一輝
村上ゆかり:宮沢りえ
岡嶋八栄子:田中麗奈
2.3 あらすじ
建築士の青瀬稔は、施主である吉野陶太から「あなた自身が住みたい家を、建てて下さい。」と依頼されます。完成した“Y邸”は建築雑誌にも掲載され、青瀬の代表作になりますが、ある時、その家には誰も住んでいないと知らされます。そして、青瀬は仕事の傍ら、吉野を探すようになり、吉野の父を知る人物に辿り着きます。
そんななか青瀬の同級生で事務所の所長でもある岡嶋が市の建築コンペの指名を巡り、新聞記者に接待の嫌疑をかけられ記事になり、そのさなか事故死してしまいます。その後、岡嶋が描き残していたコンペ案のスケッチを見た青瀬はコンペを続行すると決意します。
コンペ案制作に追われるなか帰宅した青瀬は、吉野から手紙に気づきます。
そこには、吉野の父と亡くなった青瀬の父とのつながりがかかれており、青瀬は真実をしることになります。
3.心に響いた言葉 ベスト3
第3位「おまえが死んだら帰る家はもう決まってるんだ。あの“Y邸”だよ。おまえがデスマスクをかぶる瞬間、心が向かう家だ。」
これは、青瀬の同級生で事務所の所長でもある岡嶋が、建築コンペに参加する作品の制作協力を青瀬に頼みつつもあくまで作品は自分のものにしたいと懇願するシーンでの言葉です。
1日の、人生の大半をかけてする仕事。その仕事のうちどれくらいのものを死ぬ前に思い浮かべるのでしょうか。今のところまだ私には思いあたるものがありません(笑)。でも、そういう視点で、もう少し覚悟を持って仕事に取り組むべきだと反省しました。
第2位「もし仮にこれが、ここのプレコンペを通り、本選も通り、あの野原にこのメモアールが建ったら、岡嶋の息子に、これはお父さんが建てたんだと話すことを許して欲しい。それだけだ。」
コンペ案を完成させ、それを競争相手の設計事務所に持ち込んだ時の青瀬の言葉です。
私はサラリーマンなので無償で仕事はしませんが、利害やお金、人間関係、そういうしがらみや損得勘定なしに純粋に物を作ったら、どんなものになるのでしょうね。いいものができるのか、まったくダメなのか(笑)。少し興味があります。
第1位「埋めること 足りないものを埋めること 埋めても 埋めても 足りないものをただひたすら埋めること」
劇中に出てくる画家が自分の描いた絵葉書に書き残していた言葉です。
私はこの言葉を勝手に“人は完成しないから、ただひたすら努力を続けなさい”との意味だと解釈しました。努力しても努力しても次の課題は必ずでてきます。でも、完成形はないのだから、努力すら当たり前のこととして取り組み続けるだけなのだと思います。
4.最後に
前回は「鉄の骨」の記事を書きましたが、今回もたまたまですが建築に関係した作品の紹介になりました。やはり、自分が興味のある分野が少しでも入っていると記事に書きたくなってしまいますね。
「ノースライト」を含めて、横山秀夫さんの作品はどれも登場人物の「葛藤」の描き方がリアルで大好きです。言うまでもないでしょうが、「半落ち」、「クライマーズハイ」、「64」どれも、原作・ドラマ・映画どれもハズレがなく、オススメです。