everlemoned

サッカーと建築と日々の関心事を思いのままにつづるブログ

建築

【第2回 大好きな建築 坂倉準三「旧神奈川県立近代美術館」】池から延びる?鉄骨柱と正面階段が印象的な作品です。

投稿日:2020年9月10日 更新日:

窓

Processed with VSCOcam with c1 preset

建築を仕事にしていることもあり、美術館、博物館巡りは私の趣味のひとつです。これまでに全国70ヶ所程度を巡っています。私の大好きな建築を紹介するシリーズの第2回はその中から、坂倉準三さん設計の「旧神奈川県立近代美術館」を紹介します。

この建築の特徴は、この2つでしょう。

  • 池から延びる?鉄骨の柱
  • この規模で?正面に階段

以下に、「旧神奈川県立近代美術館」をもう少し詳しく紹介していきます。

    この記事の目次

  1. 第2回 大好きな建築 坂倉準三「旧神奈川県立近代美術館」
  2. この建築物の特徴
  3. 建築を鑑賞する時の注目点
  4. 最後に




1.第2回 大好きな建築 坂倉準三「旧神奈川県立近代美術館」

日本のモダニズム建築の代表として、すでに知っておられる方も多いと思います。簡単に建築物概要を紹介します。

建築物概要
設計者 坂倉準三
竣工 1951年11月
建設地 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53
構造 鉄骨造2階建て
延床面積 1575㎡
用途 近代美術専門の美術館
2016年3月 閉館
2019年6月 鎌倉文華館として再オープン

2.この建築物の特徴

この建築の特徴は、いろいろな書籍や雑誌、紹介記事などでもたくさん紹介されています。ただ、あえて書きます。やはり、この2点です。

  • 池から延びる?鉄骨の柱
  • この規模で?正面に階段

池から延びる?鉄骨の柱
建物1階東面の鉄骨柱6本は池の中に束石を設け、なんとそこから立てています。さらに、1階東面はすべてテラス、テラス上部の2階に喫茶を配置し、きっちりと建物と水との一体感を演出しています。

塗装のみで仕上げなしの鉄骨柱を池から立ててしまうなんて、凡人建築士は考えません。えっ、錆びないの?と萎縮してしまうだけです(笑)。私が初めてこの建物を書籍でみた時の感想は、とても失礼ですが「サボア邸に似てない?」でした。

書籍を読みすすめ、坂倉さんがコルビュジェのお弟子さんであることを知り、これまた失礼ですが「やっぱりな」と思ったのを覚えています。

この規模で?正面に階段
凡人建築士なら、この規模であれば、部屋数や居室面積をどう増やすかを考えるはずです。でも、坂倉さんは正面には階段、建物内部には吹抜けの中庭を設けています。そして、この2つと池から延びる鉄骨柱が、この建物の象徴になっています。

この建物の用途は近代美術専門の美術館です。展示する作品と同様に建物自体も美術作品というコンセプトもあったのではないでしょうか。

3.建築を鑑賞する時の注目点

私は美術館や博物館を鑑賞する時、この2点に注目しています。

  • 動線計画
  • 狭い空間の有効利用方法

私は大きい建築物や住宅、店舗などの動線計画にはあまり興味はありません。それは、ある程度、決まってしまっていると思うからです。ただ、小さい建築物、特に小さい美術館や博物館の動線計画となると話は別です。興味津々です。なぜか?それはここに建築家の腕が集約されてくるからです。

狭い美術館では、いかにして展示する作品にあわせた見せ方を演出できるか、それが動線計画にかかってきます。また、演出するためには、当然、作品にあわせた空間のサイズ感があり、狭い空間を有効利用する必要がでてきます。

そこに設計者の創意工夫が必ずあって、そこを感じるのをいつも楽しみにしています。この2点を満足させてくれる建築に出会うと鳥肌が立ちます。

4.最後に

第1回で紹介した前川國男さんの「自邸」では、動線を省略するという動線計画をし、切妻屋根の形状を有効利用、空間を広くみせるという演出に鳥肌がたちました。今回の「旧神奈川県立近代美術館」は、この規模で正面に階段、室内には中庭を持ってくる大胆な動線計画に驚きました。どちらも狭い空間をどう攻略するか練りに練られた計画で、やはりおもしろい。

まだまだ、鳥肌物件はたくさんあります。また次回に。

国内最大級の取り揃え!【ひかりTVブック】

-建築
-

執筆者:


コメントをもらえるとうれしいです。

関連記事

プラン

管理建築士講習の受講は義務? 事務所専任の建築士になる方は3年以上設計業務に従事した後、講習を受けましょう。

みなさんは、管理建築士って知っていますか? この記事では、管理建築士講習について紹介します。 管理建築士講習の受講対象者、受講費用は下記です。 受講対象者: 建築士として三年以上、設計などの業務に従事 …

ビル

【建設業と仕事観】19年間で構造設計・施工管理・内装設計の業務を経験してきた私が今思うことを書いてみました。

先日の記事で建設業19年生であると書きました。 建設業のなかでも、構造設計、内装設計、施工管理といろいろな職種を経験してきましたが、絶対にこれが一番だというものには未だに出会っていません。おそらくこれ …

建設イラスト

建設業における監理技術者資格者証の更新はいつからできる? この記事では更新に必要な書類及び費用等を紹介します。

10/28の記事で建設業における「監理技術者」について書きました。 なんとその5日後に「監理技術者資格者証」交付申請書類が届きました。(笑) とてもタイムリーなので、同封書類、申請方法及び提出書類等を …

ビル

【構造設計の仕事内容】業務経験が10年の私が仕事内容、収入、労働時間及び将来性などを具体的に紹介します。

建設業には多種多様な職種があります。みなさんはそのなかでも「構造設計」という職種があるのをご存じでしょうか? 構造設計は、建物の構造体(柱・梁・壁・床等)が積載荷重、地震荷重、風荷重等に対して安全とな …

建設現場

【一級建築施工管理技士試験】3回受験した私が学科・実地試験の難易度、合格に必要な学習時間、費用を解説します。

先日、建築士試験の難易度について書きました。 今回は、一級建築施工管理技士試験バージョンです。 主に以下の2点について話します。 合格にはどれくらいの学習時間が必要か 合格にはどれくらいの費用が必要か …

プロフィール

五島風景
山本 幸一
長崎県五島列島育ちの建築士です。43歳になり、日々がマンネリ化してくるなか、何か新しい行動を起こしたいと思い、ブログを始めました。少しずつ勉強し、サッカー・建築・関心事等をアウトプットしていきたいと思っています。

詳しいプロフィールはこちら