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建築

【第1回 大好きな建築 前川國男「自邸」】機能美を追求した狭小住宅のお手本。シンプルイズベストを体現している作品です。

投稿日:2020年8月22日 更新日:

家の絵

私は、就職してから19年間、建築の仕事をしてきました。これまで仕事観や転職など2つ、建設業の記事を書いてきましたが、どちらもネガティブな内容でした(笑)。すみません。

仕事を離れて作品としてみる建築には、人を魅了する外観美、空間美、機能美を持った作品が世界中にたくさんあります。この記事からはそういった建築を紹介するポジティブな内容でいきたいと思います。

私は建築士です。仕事以外でも建築、特に美術館や博物館などを巡るのが大好きです。特に自分の予測を超えている建築に出会うと鳥肌ものです。このシリーズでは、私が今までに実際に観てきた建築物のなかから、みなさんにもぜひ一度は観て頂きたいオススメの建築を「大好きな建築」と題して、紹介していきます。

第1回は、前川國男さんの「自邸」を紹介します。この作品をひと言で表現するなら、

    シンプルイズベスト

では、詳しく紹介していきます。

    この記事の目次

  1. 第1回 大好きな建築 前川國男「自邸」
  2. この建築の特徴
  3. その他の前川國男さん作品
  4. 最後に




1.第1回 大好きな建築 前川國男「自邸」

建築物概要
設計:崎谷小三郎(前川さんのお弟子さん)
竣工:1942年
建設地:江戸東京たてもの園内(東京都小金井市桜町3-7-1)
構造:木造平屋建て
延床面積:110.56㎡

2.この建築の特徴

第1回目に大好きな建築として、真っ先に紹介したいのは「前川國男自邸」です。建築家の前川國男さんの自邸で1942年竣工。設計は前川さんのお弟子さんである崎谷さん。竣工時の建築地は目黒でしたが、現在は小金井市江戸東京たてもの園に移築されています。

私が初めて見学したのは大学生の時で、もう20年以上も前になります。玄関をあがり、左手のリビングに入った瞬間に鳥肌がたったことを今でも覚えています。規模は110.56㎡の木造平屋建て、いわゆる狭小住宅で、切妻屋根がいっそうその外観をシャープに見せています。

しかし、これは伏線です。

玄関をあがり、リビングドアをあけると、そにはなんとも広々とした吹抜け空間。切妻を利用し天井高を確保、かつ南面一面を開口にし十分な採光を入れ室を明るくし、空間を広く感じさせています

これが建築家の仕事なんだと鳥肌をたてながら思ったのを覚えています。今でも、私がシンプルな建物、機能的な空間に惹かれるのはこの自邸の影響だと思います。
どの建築にも設計者の意図はありますが、それが空間を通して明確に人に伝わるのは稀です。それが読み取れたと思う瞬間が私は好きで、建築をやっていてよかったと思う瞬間です。

建築に関して言えば、新しいもの好きの日本ではこれかもスクラップアンドビルドの時代が続いていきます。ただ、築80年弱のこの傑作が提示しているシンプルイズベストを日本の伝統として受け継いでいくべきではないでしょうか。

3.その他の前川國男さん作品

私が見てきた「自邸」以外の前川國男さんの作品には、東京文化会館、東京都美術館、新宿紀伊国屋ビル、福岡市美術館、熊本県立美術館の5つがあります。この中で熊本県美は、規模、種別、用途は全く違いますが、吹抜け、南面一面開口という手法は自邸とよく似ていて、好きな建築物のひとつです。

次回は、ル・コルビュジエのお弟子さんつながりで、坂倉準三さんの旧神奈川県立近代美術館を紹介したいと思います。やっぱり写真がなければなかなか建築は伝わらないですよね。写真を入手できたら、記事に順次追加していきます。

4.最後に

建築も美術や芸術といったもののひとつに数えらます。人のために試行錯誤のうえ、考え抜かれ建てられた建築には、やはり執念であったり意地であったりと言った”感情に伝わってくる”ものがあるように感じます。

私の場合はそういう建築にふれると感性がリセットされて、また1から頑張る活力が湧いてきます。これから、少しずつでもそういった建築をこのシリーズで紹介していきたいです。

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長崎県五島列島育ちの建築士です。43歳になり、日々がマンネリ化してくるなか、何か新しい行動を起こしたいと思い、ブログを始めました。少しずつ勉強し、サッカー・建築・関心事等をアウトプットしていきたいと思っています。

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