みなさんは、鉄川与助という建築家を知っていますか?
私は、鉄川さんと同じ長崎県五島列島で育ち、同じ建築士をしています。しかし、恥ずかしながら鉄川さんのことは「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されるまで知りませんでした。
去年ようやく、「頭ヶ島天主堂」を含め、上五島町の教会群を巡ることができました。今日は、鉄川さんの天主堂、教会を紹介してみます。このシリーズ第3回にして、ようやく写真(自分で撮った)を掲載できます。(第2回の記事はコチラ)
この建築の特徴は、この2点です。
- 周辺敷地環境との絶妙な調和
- 地元の五島石(砂岩)を積み上げた重厚な石造
以下に、「頭ヶ島天主堂」を少し詳しく紹介していきます。
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この記事の目次
- 第3回 大好きな建築 鉄川与助「頭ヶ島天主堂」
- 周辺敷地環境との絶妙な調和
- 地元の五島石(砂岩)を積み上げた重厚な石造
- その他の鉄川さんの教会を紹介
- 最後に
1.第3回 大好きな建築 鉄川与助「頭ヶ島天主堂」
建築物概要
設計・施工 鉄川与助
竣工 1919年(大正8年)
建設地 長崎県南松浦郡新上五島町友住郷頭ヶ島638
構造 組積造(石造)平屋建て
延床面積 363㎡
用途 天主堂(国指定重要文化財)
この建築物の特徴
冒頭でも書きましたが、この建築の特徴は、以下の2つ。
- 周辺敷地環境との絶妙な調和
- 地元の五島石(砂岩)を積み上げた重厚な石造
2.周辺敷地環境との絶妙な調和
私が頭ヶ島を訪れた日は見事な晴天。バスを降りると、目の前は白い砂浜と青い海。そこから、登り坂を2、3分歩くと天主堂に着きます。正面石階段下から見上げる天主堂は、バックに鮮やかな緑の森林と青い空、白い雲を従え、小さいながらも重厚感にあふれ、堂々とした姿で建っています。
これぞまさに絶景です。
周辺の敷地環境を含め、重要文化財に指定されていることも納得です。時を重ねてきた石の風化による建物全体の質感が、より周辺の森林に溶け込んでいて、一体感を演出しています。おそらく、この一体感は四季それぞれで違ったものになるでしょう。
今回は、夏でしたが、次回はぜひ秋の姿がみてみたいです。
3.地元の五島石(砂岩)を積み上げた重厚な石造
この小さな建物が醸し出す圧倒的な重厚感。建物周囲をぐるぐる回りながら、原因を探りました。「目地」です。幅広で深い目地がこの重厚感を演出しています。昔から地震の多い日本では、耐震性に劣る石造りはあまり用いられません。みなさん、海外に行き、異文化を感じる一つの要因に石造りがありますよね?私も学生時代に行ったベネチア、フィレンツェでの石造りの衝撃が忘れられません。
この頭ヶ島天主堂、大げさではなく、その異文化感を感じさせてくれます。室内に入ると、その重厚感とはまったくの正反対。シンプルで軽快な空間です。ヴォールト天井で空間を広くみせ、縦長窓で自然採光を室内の奥まで取り込んでいます。外部と内部の対比もこの建物の特徴のひとつです。
4.その他の鉄川さんの教会を紹介
冷水教会
竣工 1907年(明治40年)
鉄川さんが最初に建てた教会です。
青砂ヶ浦天主堂(国指定重要文化財)
竣工 1910年(明治43年)
鮮やかな赤レンガのファザードに圧倒されます。
大曽天主堂(県指定有形文化財)
竣工 1916年(大正5年)
正面の塔が象徴的です。
五島うどん
おいしいです。ぜひ
5.最後に
今回の記事では、「頭ヶ島天主堂」を紹介しました。私の故郷ではありますが、秘境に近いかもしれません(笑)。ただ、夏に海やおいしいものを食べながら、この教会を含めた世界遺産群を巡るのは、とてもオススメですよ。
みなさん、ぜひ検討してみて下さいね。