これまでも建設業について私が感じていることをいくつか記事に書いてきました。今回は談合です。昔から建設業での談合は、よくニュースになっていますよね。最近では、大手ゼネコン4社によるリニア中央新幹線の駅工事を巡る談合事件がありました。建設業では法で取り締まっても、談合が繰り返される現実があります。法を破るリスクよりも遥かに大きい利益が「談合」にはまだまだあるのでしょう。
今回の記事で紹介するのは、その「談合」をテーマにした池井戸潤さん原作のドラマ「鉄の骨」。談合に関わる人たちの葛藤を描いたヒューマンドラマです。
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この記事の目次
- 建設業界の「談合」は必要悪なのか?
- 作品内容の紹介
- 心に響いた言葉 ベスト3
- 最後に
1.建設業界の【談合】は必要悪なのか?
1.1 談合とは?
国や地方自治体の公共事業などの入札の際に、入札業者同士で事前に話し合って落札させたい業者を決め、その業者が落札できるように入札内容を調整することです。公共事業体と業者の癒着、汚職の温床となり、厳しい批判がなされています。(引用元:百科事典マイペディア)
最近では、大手ゼネコン4社によるリニア中央新幹線の駅工事を巡る談合事件がありました。12/22に公正取引委員会より排除措置命令が出され、2社に課徴金納付命令が出ました。
1.2 談合は必要なのか?
私も建設業の人間です。法律で禁止されている以上は、「談合」はやってはいけないものです。しかし、個人的にはメリットが全くないとも思っていません。利益の偏りが避けられ、それにより中小零細企業の資金繰りの問題が解消されれば、今まで以上に各企業も技術力の向上や人材の育成に力を注げるはずです。
ケースバイケースで公的に話し合って、受注する業者を決定するケースがあってもいいのではないでしょうか。公共事業の価格が必ずしも適正であるとは言えないケースもあるでしょうし、なにより競争入札だけでは価格が下がっていくばかりで、品質や適性工期の確保が難しくなっていくように感じます。
2.作品内容の紹介
2.1 原作
タイトル 鉄の骨
著者 池井戸潤
発行日 2009年10月7日
出版社 講談社
2.2 主な出演者
富島平太:神木隆之介
尾形総司:内野聖陽
三橋萬造:柴田恭兵
野村萌:土屋太鳳
西田吾郎:中村獅童
2.3 あらすじ
中堅ゼネコン・池松組で入社4年目を迎えた工事主任・富島平太は、突然、本社業務部へ異動を告げられ、そこで「談合」に巻き込まれます。「談合」が違法であると分かりながらも会社や社会のための「必要悪」と自分に言い聞かせ、仕事として談合を受け入れます。
そんな中、2,000億円の地下鉄工事で、建設業界の天皇と呼ばれ長年談合を取り仕切ってきた山舘組顧問・三橋から談合を迫られます。自社の技術で大幅なコストダウンを達成し、談合なしで受注可能な池松組。はたして、建設業界の悪習やしがらみから逃れられるのか。
平太と常務の尾形、そして三橋萬造。
それぞれ立場の違う3人の葛藤がリアルに伝わってくる作品です。
3.心に響いた言葉 ベスト3
第3位「正しいことばかりが正しいわけじゃない。かといって、いいかげんなことばかりが正しいわけでもない。」
第1話の冒頭、コンクリートにタバコを投げ入れた職人と口論になった平太を現場所長がなだめるためにかけた言葉です。普段の仕事で、自分ではこっちの順序で進めた方が納期を短縮できるのに?とか、そもそもその品質で大丈夫なのか?などと感じながらも、客先の意向や自社都合、上司の指示に合わせてしまうことってよくありますよね。私もよく所長の言葉と同じような思いを持ちながら仕事をしているので、とても共感できる言葉でした。
第2位「自信はありません。でも、悔しかった。いつか見返してやりたいと、そう思いました。」
第2話、他社のゼネコン幹部とともに三橋の主催するお茶会に招待された平太。そこで、他社の幹部に理由もなく、場をわきまえろと馬鹿にされます。お茶会が終わり三橋に感想を聞かれた平太が答えた言葉です。目上の人が必ずしも自分より優れている、努力しているとは限りません。むしろ、努力を怠っている人ほど、若い芽を摘もうとしたり、利用しようとしたりしてくるものです。平太の様に悔しさや見返してやりたいと思う気持ちを持てるかどうかで、その後の成長速度がまったく違ってくると私は思っています。
第1位「お前なら、期待以上の働きをするかもしれん、そう思った。その通りになった。」
最終5話のラストシーン、尾形が平太にかけた言葉です。尾形は入社試験の面接で平太が言った「たとえ見かけは平凡でも、施主にとってその建物には夢がある。」との言葉に感心し、それをずっと覚えていました。平太が業務部に抜擢されたのは、ほかならぬ尾形の期待があったからです。人に期待するのはとても難しいですよね。私は苦手です。自分でやる方が楽です(笑)。ただ、それだといつまでたっても現状維持しかできません。誰かに期待し、信頼できる仲間を築いていく、それが仕事をする意味のひとつだと思いなおせた言葉でした。
4.最後に
私も建設業に携わっているので、共感する部分もあり、ドラマの内容がよりリアルに感じられた気がします。神木さん、内野さんをはじめ、出演者の方々の演技力もすばらしく、全5話を一気に観てしまいました。
この先もおそらく建設業では談合はなくならないでしょう。談合を否定するだけではなく、メリットを汲み取った新しい入札システム作りも必ず必要だと感じます。
「鉄の骨」は、2010年にNHKでも小池鉄平さん主演でドラマ化されています。
こちらもすごくオススメです。ぜひ、2作品セットで観て下さい。