ここのところ、「鉄の骨」、「ノースライト」と建築に関係する書籍やドラマの記事を2つ投稿しました。今回もその流れで、「建築史探偵の事件簿」(蒼井碧著)を紹介します。以下の3つのテーマが好きな方は、どハマりするかもしれませんよ。
- 日本建築史・世界遺産
- 世界七不思議
- ミステリー
この組み合わせは斬新ですよね。蒼井さん、目の付け所が違い過ぎます(笑)。それでは、以下に詳しく作品を解説していきます。
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この記事の目次
- 「建築史探偵の事件簿」は日本の世界遺産と世界七不思議のつながりをひも解いていく建築ミステリー
- 「建築史探偵の事件簿」の作品紹介
- 心に響いた言葉
- 最後に
1.「建築史探偵の事件簿」は日本の世界遺産と世界七不思議のつながりをひも解いていく建築ミステリー
みなさんは、世界七不思議と聞かれて、すっと7つでてきますか?
私は、ピラミッド、バビロン、モアイの3つはでてきましたが、その他はダメでした。
まず、ストーリーの中核をになう世界七不思議を紹介します。
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世界七不思議
- ギザの大ピラミッド
- バビロンの空中庭園
- エフェソスのアルテミス神殿
- オリンピアのゼウス像
- ハルカルナッソスのマウソロス霊廟
- ロードス島の巨像
- アレキサンドリアの大灯台
この作品は、主人公で建築史を学ぶ大学院生の不結論馬が、日本の歴史的建築と世界七不思議を結びつけていく、謎解きミステリー。おもしろいのは、その謎解きが殺人や火災といった事件を通して、展開せれていくところです。
少し建築的にも内容が難しいですが、私のように建築を仕事にしていたり、建築を学ぶ学生さんであったり、世界七不思議みたいな都市伝説が好きだったりする方には超オススメです。勉強にもなりますよ。
2. 「建築史探偵の事件簿」の作品紹介
2.1 原作
タイトル:「建築史探偵の事件簿 新設・世界七不思議」
著者;蒼井碧(あおい ぺき)
発行日:2020年10月29日
出版社:宝島社
蒼井碧さんのその他の作品:「オーパーツ 死を招く至宝」(宝島社)
2.2 主な登場人物
不結 論馬(ふゆい ろんま):主人公で、建築史学を専攻する大学院生。
不結 秀一(ふゆい しゅういち):論馬の義兄。大学教授で歴史学者。
由布院 蘆花(ゆふいん ろか):秀一の研究室の准教授で、歴史学者。
2.3 あらすじ
作品は3つの短編をつなぎあわせた構成になっています。
巌竜洞の殺人
東北に1人旅に出かけた論馬は、観光に行った洞窟で足を滑らせ転倒し、気を失います。気が付くとそこは宿泊先の旅館。そこで、仕事で訪れていた義兄の秀一とその教え子たちに自分が助けられ、また、教え子の2人が音信不通になっていると知らされます。秀一たちとともに洞窟内を捜索にあたりますが、そこには2人の死体が...。
金字塔の雪密室
ある日、試験明けで学生がおらず静かな論馬の研究室に秀一の研究室の准教授である由布院蘆花が現れます。由布院は富士山研究のため、秀一から論馬を紹介されていました。論馬は知人で富士山研究家の原崎に連絡を入れますが、すでに亡くなったと知り、2人は原崎の経営する山荘を訪問します。そこで、再び殺人事件に巻き込まれてしまいます。
石灯籠の不可能犯罪
論馬と秀一の妹である那綱。その那綱の同級生の実家・鳥羽見石材店で火事が起こります。元気のない友達をみかねた那綱は、論馬と由布院に放火犯を見つけてほしいと頼みます。3人は鳥羽見石材店を訪れ、従業員に話を聞くうちに、犯人とそのトリックに辿り着きます。
3.心に響いた言葉
「発想というのはまったくの無から生まれるものではない。それまでの人生で培った経験則や、蓄えてきた知識が呼び水になり、それらが無意識に連鎖していくことでようやく形になる、そういうものよ」
普段の仕事でもまったく同じです。効率的に仕事を終わらせるには経験と知識が必要で、どちらが欠けていてもうまくいきません。バランスが大切ですよね。ひとつひとつの仕事を考え抜いて、調べあげる。それを繰り返し、繰り返し、経験する。このサイクルを地道にまわし続けていくとある時ふと、“できる”とか“わかる”感覚がでてきます。
できるだけ多くの連鎖を生み出せるように、日ごろから多くの知識を蓄える努力が必要です。経験だけがあっても、なかなか新しいアイディアや発想には結びつかないものです。
4.最後に
「建築史探偵の事件簿」は、日本建築史・世界遺産も七不思議や都市伝説も大好きな私にはたまらない作品でした。とても日本建築史の内容が専門的で、目の付け所が違うなと感心しながら読ませていただきました。ぜひ、シリーズ化してほしいですし、映像化してもヒットするのではないでしょうか。
法隆寺や日光東照宮、富士山にもまた行ってみたいなぁ。